海よりも深く
樹木希林さんを偲んで「海よりも深く」という映画をAmazonプライムで見ました。
その中で衝撃を受けたシーンがありました。
阿部寛さん演じる息子さんとの会話シーンで、「コロッと死んで毎晩夢に出てくるのと、寝たきりになって長生きしてから死ぬのと、どっちがいい?」(という内容の台詞)
父はコロッと死んで毎晩私の夢に出てきます。樹木希林さん演じる母親が言ってたのと同じで夢の中で毎晩出てくるから私にとっては生きているようなもの。
そして母は寝たきりです。もうかれこれ5年以上になります。
母は少しずつ少しずつ弱っていき、まるで幼児だと思っていたのが2歳児レベルになり1歳児レベルになり…
暴れないので介護は楽です。というか、罵声や暴言に心が傷つけられて何度泣いたかわかりませんがその段階も過ぎました。
今、大変なのは下の世話だけです。
食事は自力でスプーンが持てなくなったので私が食べさせていますが、黙って口を開けて食べてくれます。
お腹の具合が、便秘になったり下痢になったりするのが本当に大変です。下痢になった時の後始末が精神的にやられます。
介護職の人を尊敬します。私は自分の親の紙おむつでさえ替えるのが辛いです。
でも、母がコロッと死んでいたら私は一生悲しみから立ち直れなかったと思います。
こうして少しずつ、母が母じゃなくなっていく姿に寄り添いながら何年も過ごすうちに、いつの間にか私は母から精神的に解放されてきています。
そう思うと母に感謝せずにはいられません。
共依存の関係だった母と私。
過干渉で気が強くて、絶対に逆らえなかった母。
けれど母無しでは生きていけないほど依存していた私でした。
それが今では私の管理下で完全介護の母になりました。
母の魂はもう半分あちらの世界に行ってしまっているようです。
人との別れにこんな「少しずつ」という別れかたがあるという不思議。
もう、いつ死んでも悲しまずに見送れると思います。